感染症学研究室

研究紹介

 

抗菌活性を示す新規化合物の探索

溶菌酵素の分子メカニズムの解明と応用研究

 細胞壁(ペプチドグリカン)は、細菌細胞の外側にあり、細菌が生存して行く上で必須の構
造物です。また、ヒトには細胞壁がないため、細胞壁の合成をターゲットにしたお薬(βラクタム系抗菌薬)は、細菌のみに作用しヒトには作用しないことから安全性の高いすぐれたお薬です。細菌の細胞壁は、糖がつながったグリカン鎖を8〜12個のアミノ酸からなるペプチド鎖(種や属により異なる)が架橋した網目構造のペプチドグリカンにより構成されています。溶菌酵素は、ペプチドグリカンを分解する酵素であり、その分解部位により大きく4種類に分類されます(図1)。また、溶菌酵素は、ファージの放出に関与するエンドリシンと細胞分裂時のペプチドグリカン再構築に関与するオートリシンに分けられ、共に細胞外から作用させると細胞壁を破壊し、菌を死滅させることができます。なお、溶菌酵素は、菌の種もしくは属特異的に溶菌活性を示すことが知られており、一般的に種特異性はエンドリシンが高くオートリシンは低い傾向にあります。当研究室では、溶菌酵素が感染症治療の薬として利用できるのではないかと考え、その基礎研究と応用研究を行っています。特に、食中毒やガス壊疽を起こすウエルシュ菌(Clostridium perfringens)や偽膜性大腸炎の原因菌であるディフィシル菌(Clostridium difficile)等のグラム陽性嫌気性菌をターゲットとして研究を行っています。これまでに、ウエルシュ菌特異的溶菌酵素であるPsmの構造(Fig. 2)とその反応メカニズムを明らかにしてきました。この酵素が、どのようにペプチドグリカンを認識しているかまだまだ不明な点が多く残されています。また、他の溶菌酵素に関してもその性質の解析、構造解析、反応メカニズムの解析などを遺伝子組換えを用いて研究を行っています。


詳細紹介

 

 工事中

新規抗菌薬の開発を目指して

 近年、抗菌薬(抗生物質)が効かない薬剤耐性(AMR; Antimicrobial Resistance)を示す菌が世界的に増加しています。一方、新たな抗菌薬の開発は減少傾向にあります。この薬剤耐性に対して有効な対策を講じなければ2050年には全世界で年間1000万人が薬

剤耐性菌により死亡することが推定され

ています。

 当研究室では、新規の抗菌薬の開発を

目指して細菌の細胞壁を分解し菌を殺す

酵素(溶菌酵素)の分子メカニズムの解

明とその応用研究、さらには、抗菌活性

を示す新規化合物の探索を行っています。