研究トピックス

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研究トピックス
 
古川美子
薬理学研究室
古川 美子 教授

薬理学研究室の研究テーマのひとつは、損傷を受けた中枢神経系の修復を目指した神経保護薬の開発で、これまでに、柑橘の果皮に脳保護作用を示す物質が複数存在することを見つけました。たとえば、脳虚血モデルマウスに投与すると、ヘプタメトキシフラボンは脳における「脳由来神経栄養因子(神経細胞を守るタンパク質)」産生を促進し神経細胞死を抑制します。オーラプテンは脳における炎症を顕著に抑え神経細胞死を抑制します。これらの、世界で初めて明らかにできた知見は国際的な学術誌に報告するとともに、国際学会でも発表しています。

神経疾患、精神疾患、神経障害は様々な原因によりおこりますが、最終的に神経細胞死が生じ、種々の病態をひきおこします。したがって、神経細胞保護作用を有する医薬品の開発は、これらの疾患における病態の発現予防、治療に効果を示すと期待され、産官学の連携で進めているところです。探究心に溢れた学生を求めています。愛媛県発柑橘由来神経保護薬開発に向け、一緒に頑張りませんか。高度な実験手技と豊かな知識を兼ね備え、未知の分野を切り開いていく意欲をもつ研究者を育成することを通じて、問題解決能力をもつ医療人を育成していきたいと考えています。

舟橋 達也
衛生化学研究室
舟橋 達也 教授

衛生化学研究室では病原性細菌、特に日和見感染菌や食中毒細菌の鉄獲得機構に関する研究を行っています。医療現場では日和見感染菌の抗生物質多剤耐性化が問題となっており、治療困難になる事例が多数報告されるようになってきました。本研究室では、新たな感染症治療薬のターゲットや食中毒細菌の増殖抑制にもなりうる細菌の鉄獲得機構を研究対象としています。ヒトと同様に、細菌においても鉄は生存、増殖のために必須の元素です。しかし、ヒトの体内においては細菌が容易に利用可能な遊離鉄濃度は極めて低いレベルに維持されており、鉄の多くはヘモグロビンやトランスフェリンなどの生体内鉄結合タンパク質として存在しています。病原性細菌はそのような環境下で生存、増殖するために多様な鉄獲得系を有しています。その1つがシデロフォア(三価鉄キレート分子)を介する鉄獲得機構です。これまでに、病原ビブリオやアシネトバクター属菌からシデロフォアを単離し、その構造を決定しました。現在は、シデロフォアを介する鉄獲得機構の分子遺伝学的解析やその転写調節機構に関する研究を行っています。今後も病原性細菌における鉄獲得機構の研究から新たな感染症治療薬の開発や食中毒を防止する新たな手法を提供するための基盤となる研究を進めていきたいと考えています。

明樂 一己
薬品分析化学研究室
明樂 一己 教授

薬品分析化学研究室では、分析技術を医療薬学に応用する研究を進めています。主な研究テーマは、高速液体クロマトグラフ装置、核磁気共鳴装置、安定同位体等を利用した病態評価、診断、薬効・毒性評価などの方法の開発と応用に関する研究です。その1つとして、臨床検体に含まれる代謝物を核磁気共鳴装置で網羅的に測定することによって、例えばがん患者の尿検体について特徴的な代謝変化を明らかにする研究を行っています。また、安定同位体(13C)で位置選択的に標識した特定の基質を投与し、呼気中の13CO2を測定する呼気試験の開発に関する研究を実施しています。呼気はあまり注目されてこなかった臨床検体ですが、この方法によれば、薬物代謝能や代謝異常などについて、これまでにない全く新しい生体情報を簡便な操作で得られる可能性があります。一方、院内製剤の品質評価を抗がん薬暴露を防止するための方法など、医療現場の問題を解決するために、実務・臨床に直結した課題にも取り組んでいます。

当研究室では、これらのテーマについて、他大学や医療機関との共同研究を積極的に行い、高度な分析化学的素養を身につけて医療薬学分野の課題を科学的に解決できる研究者・医療人の養成を目指しています。

古川髙取 真吾美子
医薬情報解析学研究室
髙取 真吾 准教授

医療情報解析学研究所では、臨床現場の様々な問題点をテーマとした臨床・基礎研究を行っています。

愛媛大学病院薬剤部との共同臨床研究では、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬がオキサリプラチンにより誘発される末梢神経障害の発症を有意に抑制することを世界で初めて証明しました。現在、多施設共同による後方視的研究(研究代表者:髙取真吾)を開始し、オキサリプラチンやその他抗がん剤誘発末梢神経障害に対するRAS阻害薬の抑制効果について更なるエビデンスを蓄積しています。また、2型糖尿病患者におけるDPP-4阻害薬の臨床効果に影響を及ぼす患者背景因子も新規に同定し、適正かつ安全な薬物治療の推進に貢献できています。

さらに、抗がん剤により惹起される高血圧の発症メカニズムの解明や炎症性大腸疾患の発症・進展における大腸血管周囲神経機能・分布変化について基礎的な検討を行っています。我々が取り組んでいる臨床・基礎研究の最終目標は、「病に苦しむ患者さんを幸せにすること」です。臨床現場において、解決できずに放置されているもしくは何とかしたいがその解決方法が分からない問題点を我々と共に解決し、世界中の患者さんを幸せにしてあげたいと思いませんか?

愛媛県病院薬剤師会誌<松大Topics>
愛媛県病薬会誌通巻117(2015)
衛生化学研究室
薬品分析化学研究室

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