薬剤師の業務は今や薬局内だけでなく、病棟や在宅療養中の患者宅にも広がりつつあります。薬剤師はフィジカルアセスメント(視診や聴診、触診などによって患者の全身状態を評価すること)により薬物治療の効果と副作用を確認する技能や、他の医療従事者と協力して人命救助にあたる技能も必要とされます。
本学薬学部では、これらの技能修得を目的として、各種シミュレーター(患者の病態や症状を再現することができるロボット)を利用したシミュレーション教育を実施しています。臨床現場における実務実習開始前の薬学生にとってシミュレーション教育は極めて有効であり、感染症の拡大により学生同士の身体接触を避けるべき状況下においても安全に学習することが可能です。これからの薬剤師には、入院中の患者や在宅訪問といった場面で、患者の身体所見を自ら評価できることが求められています。シミュレーターを用いた実習を行うことで、薬物治療後の全身状態を確認し、正常な状態と病的な状態を見分け医師への処方提案ができる薬剤師の育成につなげていきます。
学生の声
4年生
島中 奈々 さん
(奈良県
畝傍高等学校 出身)
全身観察・診察用シミュレーターを用いて、瞳孔の開閉、脈拍、心音、呼吸音、腸音、浮腫、血圧などを聴診器や手を使って確認しました。これらの実習で、薬学的視点から患者さんの状態を判断・把握することの必要性を学びました。また、心肺蘇生法では、力加減やスピードの調節が難しく、人命救助には周囲の人との連携がとても重要であることを学びました。実際に体験することで、授業で学んだことと臨床の知識が関連づけられ、臨床における薬剤師をより身近に感じました。